活動報告

コラム~第76回「取壊し最有効使用」

2025.10.7

鑑定評価では、取壊し最有効使用という概念があり、実務上、不動産評価においては重要な概念である。

取壊し最有効使用とは、例えば商業地において低層の木造店舗がある土地の場合、そのまま利用するには最有効使用の観点から取り壊し利用することが最も経済的に合理的であると判断される場合を指す。具体的には、以下のようになっている。

① 現状の建物の利用状況から判断して、現在の建物が経済的に有効に利用されているかどうかを判定し、容積率を充分に活用していない建物、古い建物、機能的に陳腐化した建物は、取壊しが最有効使用と判定される。 

② 取壊しにかかるコストから判断して、取壊しに必要な費用が高額である場合や、現状の建物の維持費や修繕費がそれを上回る場合、取壊しが選択されることがある。 

③ 土地の利用可能性において、土地が新たな用途に適していない場合や土地の利用効率が低い場合、周辺環境との適合性が欠けている場合にもこの判断がされる。 

以上のように、現況が土地の有効利用を阻害している状況にあれば、取壊し最有効使用の観点から現況の建物の価値を無視して、更地価格から取壊し費用等を控除して評価されることとなる。

一方、相続税の税務評価においては、土地と建物は別評価となり、この取壊し最有効使用の概念はないので注意を要する。古い建物の敷地があった場合、建物については、固定資産税評価があれば、その価格を前提に評価し、土地については、路線価等で更地評価として評価することとなる。なお、貸家、貸家建付地の評価はある。

鑑定評価においては、税務評価と異なることが多いので留意すべきである。


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