コラム~第59回「使用貸借」
2025.2.6
法人税の取り扱いでは、個人と法人との間において建物等の所有を目的とした使用貸借での土地において地代の収受がない場合については、無償返還届出がない限り借地権の認定課税がされることとなっている(法人税法基本通達13-1-7。)
一方、相続税法では使用貸借に係る土地についても、裁決判決においてこの法人税の取り扱いに準拠することとなっているので、無償返還届出がない限り借地権があるものとして評価することとされる。
その理由としては、個人対法人間の土地利用において、土地の所有者である個人に相続があった場合、その土地について、個人の関係では使用貸借であるので借地権なしとして更地として評価し、一方、法人において借地権をその法人税法の通達を前提に借地権を評価すると同一と土地について個人と法人で二重に課税することとなるのでこれらを整合するため土地の使用貸借でも借地権の認定課税されることとなっている。いわゆる法人税法の規定が優先されている。
その考え方は、当事者が使用貸借として地代を支払わず無償にて土地を利用することを同意し、借地借家法の規定は適用しない民法の使用貸借であると認識しているのにも関わらず、法人税法、相続税法では、借地借家法の土地賃貸借を擬制し借地権があるものとして税務上処理をすることは問題がある。
税理士間でも、使用貸借における借地権を認めることは反対であるとの意見も聞いている。税務実務上混乱しているのが実情である。
例えば、遺産分割における土地の評価は時価とされている。その場合、鑑定評価では、使用貸借の土地については、法律上借地権は評価しないであろう。そうすると、税務上の評価と鑑定評価の時価とは大きく異なることとなり遺産分割において混乱する。
したがって、税務上の使用貸借については再考する必要があるものと思われるし、鑑定評価においても留意したい。