コラム~第40回「無償返還の届出」
2024.4.25
税務実務上、無償返還の届出が税務署に提出されている場合、借地権の認定課税がされないこととなっている。本来は、借地借家法(平成3年以前は「借地法」)があり、その土地上に土地所有者以外が無償又は有償で建物を建築した場合、借地権の認定課税がされることとなっていた。それでは、税務行政上混乱することとなるので、昭和55年法人税法(通達13-1-7)、相続税法(個別通達)において土地所有者と建物所有者とが連名で無償返還届出を所轄税務署に提出している場合には、借地権の認定課税はされないこととなっている。
それでは、鑑定評価では、その無償返還届出がある土地について評価はどうすべきであろうか。
私見ではあるが、無償返還届出は、あくまでも税務の評価の考え方であり、借地借家法上から考えると無償では土地の使用貸借であり借地権はないものとし、有償では、土地の賃貸借であり、借地権は存在しているものと判断される。
また、無償返還届出は、土地と建物との所有者が親子等の同族関係者であり、通常の土地賃貸借ではないことから、その無償返還届出は第三者には適用されない判決もあり、借地借家法にも第16条において借地権者に不利な条件は無効とすることとなっており、それらを勘案すると無償返還届出がでているものであっても地代を収受しているものである場合には、通常の借地権が存在するとして鑑定評価を行うこととなる。