コラム~第34回 個別通達「居住用の区分所有財産の評価」について(2)
2023.10.26
前回では評価乖離率の説明をしたが、今回では評価水準の補正についてである。
居住用マンション一室の相続税評価額
=土地全体の相続税評価額×共有割合(敷地権割合)×「区分所有補正率」
+一室の建物の相続税評価額(固定資産税評価額×1.0)×「区分所有補正率」
区分所有補正率
=評価乖離率×評価水準
評価水準の補正率の考え方は、以下のとおりとなる。
1を評価乖離率で除した値(1÷評価乖離率、いわゆる市場価格との開差率)により、以下の区分で調整する。
評価水準 | 適用する区分所有補正率 |
1超 | 区分所有補正率=評価乖離率
相続税評価額が市場価格より高いので、評価乖離率で減額し、評価水準0.6の補正はしない。この場合、市場価格よりも高くなることもあるので、鑑定評価での申告も可能である。 |
0.6以上1以下 | 個別通達適用なし
相続税評価額と市場価格が近似していることから、個別通達の適用はしない。 |
0.6未満 | 区分所有補正率=評価乖離率×評価水準0.6
相続税評価額が市場価格より0.6以下と低くなっていることから、市場価格を目安とし、市場価格による評価の安全性0.6を乗じて評価する。 |
以上のとおり、評価水準とは、相続税評価額と市場価格との格差率で、以下のとおりとなる。
- 相続税評価額<市場価格が6未満となると、価格の評価の安全性を考慮して評価乖離率に0.6を乗じて、減額するとのことである。一般的には、このケースがほとんどとなる。
- 評価水準6~1までだと相続税評価額≒市場価格となることから、相続税評価額で評価する。このケースは、地方都市、郊外のマンションが該当することとなる。
- 相続税評価額>市場価格が1超えると相続税評価額が市場価格を超えるので、相続税評価額に評価乖離率を乗じて相続税評価額を減額することとなる。
このケースは稀であろう。リゾート地のマンションが該当するものと思われる。市場価格での申告が可能であり、鑑定評価も活用できる。