活動報告

コラム~第32回「海外不動産の評価」

2023.7.26

前回、アメリカの不動産の土地建物区分については、固定資産税課税のための課税標準額が公表されており、その価格が土地建物区分に利用されていると説明した。しかし、その評価方法には、問題がある。アメリカの不動産を売買する場合、その移転登記をする場合、売買価格を登記することとなっている。また、イギリスにおいても不動産を売買する場合、弁護士が適正価格証明書を発行することとなっており、海外においては、不動産の売買価格がオープンになっている。アメリカにおいては、その売買情報をもとに固定資産税評価額を修正するのが基本となっている。しかし、その固定資産税評価は、課税目的であるために時価を評価するのではなく、固定資産税の負担の軽減等を図り、評価が調整されているのが現実である。最近、知りえた取引では、戸建において売買前は土地30%、建物70%との評価であったものが、売買後の評価が土地70%、建物30%となった例があった。いわゆる、適正時価として判断するのではなく、固定資産税課税のために簡便的に評価しているのが通常である。日本の裁決事例で海外不動産の時価について問題となった案件で課税庁は、アメリカの固定資産税評価額が正しいとした裁決事例があるが、必ずしも固定資産税評価額が正しいとはいえない場合があるので気を付けたいものだ。そのような場合は、アメリカの不動産鑑定士に評価を依頼して、適正時価を判断することとなる。


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