コラム~第17回「建物の時価」
2022.11.17
セカンドオピニオンとして、個人から同族法人に賃貸マンションの建物だけを売却したいので、その建物の売買価格をどのようにしたら良いかをアドバイスを頼まれる。その時には、①固定資産税評価額、②固定資産税評価額を0.70で割り戻した価格、③未償却帳簿価格、④鑑定評価額の価格が考えられるが、どの価格にしたらよいかとの質問がある。基本は、鑑定評価となるであろう。しかし、法人税法では、法人税の基本通達9-1-19減価償却資産の時価として、未償却帳簿価格が認められることとなっており、また、裁決・判決では、固定資産税評価額が建物時価として認められていることから、①又は③の価格でも実務的には、よいこととなるであろう。ただし、②の固定資産税評価額を0.70で割り戻すことはいかがなものであろう。土地価格では、地価公示価格の0.70が固定資産税評価額となっていることから問題はないであろうが、建物については、固定資産税評価額の0.70水準となることの根拠はない。したがって、建物の固定資産税評価額の0.70は問題となる。実務的には、建物の固定資産税評価額は、現実の取得価額の0.30~0.40といわれていることから、建物の固定資産税評価額は、下限値として考えるべきである。