活動報告

コラム~第16回「鑑定評価と利益相反」

2022.11.8

金融庁は、令和4年7月にREIT業者に行政処分を行った。その理由として、REIT業者の親会社に不動産売却するにあたり、その売買価格を数社の鑑定業者に価格を内報させ、そのなかで一番高い価格を提示した鑑定業者に鑑定依頼を行い、適正な時価を超える鑑定評価により売買したことが利益相反に著しく違反することと判定された。

十数年前においても、県の公共用地取得のための鑑定評価において、県の希望価格に沿って鑑定評価を行ったところ、住民から損害賠償請求があり、通常の時価より相当高いとして裁判で敗訴し、鑑定業者が損害賠償をした事案があり、鑑定業者も懲戒処分を受けたことがあった。

鑑定業者としては、依頼者の意向に沿って鑑定評価することがあり、そのような鑑定評価を行うと懲戒処分されるリスクがある。多いのは、弁護士等の訴訟鑑定により、依頼者の思惑に沿う鑑定評価をするようなことが多いが、不動産鑑定士として倫理の問題となる。十分に注意をする必要がある。

鑑定協会では、平成24年から依頼者プレッシャー制度を設け、依頼者から鑑定評価に対して不当な働きかけを行けた場合は通報制度が設けられている。


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