コラム~第13回「建物の鑑定評価と評価通達」
2022.10.5
評価通達における建物の時価は、「その家屋の固定資産税評価額」に倍率を乗じて評価することとなっている。固定資産税評価額は、総務省が発表している固定資産評価基準により求められることとなる。その固定資産評価基準では、建物の評価については、再建築価格を基準として評価する方式(再建築価格方式)となっている。再建築価格方式は、評価の対象となる家屋と同一のものを、評価する時点において、その場所に新築するとした場合に必要とされる建築費(再建築価格)を求め、この再建築価格に時の経過等によって生ずる損耗の状況による減価を考慮し、必要に応じて需給事情による減価を考慮して家屋の価格を算出することとなっている。なお、新築時点においては、都道府県の家屋担当者が評価を行い、その後、市区町村にその評価額が引継ぎされ、市区町村の家屋担当者が3年毎に評価替えすることとなっている。再建築価格については、建物の躯体、仕上げ、設備等の各部位ごとの積算方式により細かく計算するようになっているが、建物の固定資産税評価額は、土地の固定資産税評価のように地価公示価格の80%水準ではなく実際建築費の30%~50%水準となっているのが現状である。
そうすると、貸家建物の固定資産税評価額の水準は、鑑定評価額を時価とした場合に比して以下のようになる。(貸家建物の固定資産税評価額水準を鑑定評価額の40%と推定した。)
貸家建物の固定資産税評価額=100(鑑定評価額)×40%(評価水準)×0.70(借家権控除)=0.28
以上のように、固定資産評価基準による貸家建物の固定資産税評価額は、鑑定評価額の約4分の1、固定資産税評価額の約4倍程度と推察される。評価通達の建物の時価として固定資産税評価額は妥当といえるのであろうか。早急に、改善する必要があるのではないだろうか。